今日の夕ご飯

 

カイトとリンが朝ごはんを一緒に食べるようになってから半月くらい経ってからの出来事だった。

 

いつもは自分ひとりで起きてくるリンが今日は来なかった。
きっと少し寝坊でもしたんだろう。そう思って、10分ほど待っていたがやはり来ない。

リンの分のおかずを取り分けて、ラップをかける。
久しぶりに静かな朝だった。

ご飯を食べて、歯磨きをして、出かけるまでのわずかな時間。
最近はリンとおしゃべりをしていることがほとんどだった。
特に多い話題は夕ご飯のメニューのリクエスト。
それから、たまにはリンがマスターと練習している曲を聴いたり。

なんとなく、ひとりの時はどうだったか思い出そうとした。でもいまいち分からない。
ただ、リンのことが気になって、いつも元気に入ってくるその扉を何度も目の端で確認した。

 

結局リンは来なかった。
玄関で靴を履き替えるのもやけにゆっくりと。
あとは扉を開けて、出て行くわずか10秒にも満たない時間だけなのに、何をこんなに期待しているんだろう?

何度も口から出そうになるため息を堪えて、慣れた道を早足で歩いた。

 

* * *

 

夕方、家に着くとまずリビングに向かった。
リンも…ミクもレンもいない。
ただ、マスターとメイコのいる向こうの部屋から時折笑い声が聞こえてくる。そっちにいるんだろうか。
次は台所へ。
食卓の上に今朝置いたはずの皿がなくなっていた。
やっぱり寝坊かな?後で聞いてみよう。

「あっ、にいに帰ってたの?」
「リン…」
声のほうに振り返ると、そこには間違いなくリンがいた。
カイトはうれしそうに目を細めて駆け寄る笑顔に今日の夕ご飯はハンバーグだと告げる。
リンはぴょんぴょんと跳ねて嬉しそうだった。

ただ。

 

次の朝もリンは来なかった。

 

 

キリがよいので続いてしまいます。短いけど続いてしまいます。もともと長いのはあんまり…w
またこっちの更新をがんばるよ。ちょっとオフラインが忙しいんで、よろよろとですが。

 

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