※事後注意だよ!
5.大好き
気付いたのは小さなくしゃみだった。
胸元にうずくまったリンは寝ぼけ眼で顔を擦るとすぐ元の位置に戻っていった。
あの後最低限の処理だけして寝てしまったのかが悪かったんだろうか。
シーツは替えられなかったからお世辞にも気持ちよくはないだろう。「リン、起きられる?シャワー浴びよう?」
ぽんぽん、と背中を叩くとリンは首を振る。
「じゃあ、タオル濡らしてくるよ」
身体を起こそうとすると思い切り爪を立てられた。「いいから黙ってここにいて」
「はい…」必要とされているのかいまいち自信がない。
あの日からいつまでも平行線を辿っていて、いまいち近づききれていない。
僕がこんなのだからリンは不満そうな顔ばかりするんだろうか。
「あと、もっと一生懸命抱きしめて」
「え?」久しぶりに目が合うと、リンは当然のようにため息を漏らした。
「何か別のこと考えてるでしょ?そんなんじゃ満足できない」
「そんなことないけど…」とっさにそう返したが、僕は次の瞬間には謝ろうとしていた。
でもそれより早いリンの切り返しにそれは阻まれた。
リンにはきっとお見通しなんだろう。
上手く誘導してくれるリンには年下なのにたのもしいし、感謝している。「うそ。だったらいつもみたいにぎゅーってやって」
「あれやると、リン、いやっていうから…」
「いいからやって!」
黙って言われたとおりにすると、やっぱりリンは不満そうな顔をした。
但し、これはどう対処すればいいか知っている。リンも多分わかってやっているんだと思う。
「リン、好きだよ、大好き」
その耳元に囁いてやるとほんのり赤く染まった。
単純な僕は嬉しくてまたぎゅーっとしてしまう。「…ばか」
珍しく背中に腕を回してきたリンにただただ安堵の息が漏れた。