好きのお題 2.好きなんて言えない
「あ、あれ……?」
兄(にぃ)が間抜けな声でそう言った。
前回までのあらすじ。あたしと兄は駅前の新しく出来たアイス屋さんへ出かけた。
「ラーメンじゃあるまいし、何よ、仕込みの分がなくなったら閉店って…」
早い話、本日の営業は終了しましたってこと。
これじゃあ暑い中、わざわざついてきて あ げ た 意味が無い。辺りはもう薄暗くて、繁華街は制服を着たカップルとかそんな人たちで溢れていた。
こうしている間にもあたしたちと同じような反応をした人たちが3組ほどUターンしていった。
兄はというと…肩を項垂れて変な顔で店の中を覗いている。変な顔。大事なことなので2回(ryそれにしても…こんな時間に出かけるのは久しぶり。
目を離したらはぐれてしまいそう。「この時間は人が多いんだね」
「リン、もしかして、人ごみ苦手?」「………」
この場合、沈黙はどんな風にとられているんだろう。
兄は私の顔を見て、少し困った顔をした。
無理矢理連れ出してごめん?賑やかで楽しいね?ふと、店のガラス越しに兄が手を伸ばしているのに気付く。
振り返ると答え合わせの時間がやってきた。
「僕たちも手、繋ぐ?」
「は?」
一瞬、それが何を意味しているのか分からなかった。
「羨ましいのかなって思ったから」
黙っていると、兄は目を細めた。
こんなときの兄はずるい。
優しい笑顔を見てると、ときどき吸い込まれるように何も考えられなくなる。「べ、別にっ」
やっとの思いで吐き捨てたものの、心臓がばくばく言っている。
あたしは差し出す手の横をそっと抜けて元来た道に方向転換した。
何で?自分の事なのに突如意味が分からない。「あ、リン」
結局、追いかけようとする兄に、手を、取られた。
指先に仄かな熱。暖かい、温かい、熱い。「……」
「何?」
「僕は、繋ぎたい……、な」
兄は柄にも無くほんのり頬を赤くして、あたしをつかんだ手に力を入れる。
「…ふーん」
興味ない振りをして、平然、平然を装う。不釣合いなのは分かっている。けど。
内心、ドキドキが聞こえてるんじゃないかと思ってまたドキドキした。なのに、時間よ止まれって何度も願った──
「ごめん」
不意に力の抜ける手。
あたしがしゃべらなくなったからだろう。
さっき兄がやったように引き止めると、兄が息を呑んだ。
自分でも少し驚いた。
「べっ、別に」
帰ってきたぬくもりにまたそっけない振りをして。
それから熱の篭った顔に気付かれないよう、そっぽを向いた。
ツンデレ第2話。ツンデレいいかも試練。自分のかいたものに萌える不思議体験。
読みは兄(にぃ)でも打つ時は兄(あに)なので、兄者…のあのAAが浮かびます。