好きのお題 1.好きじゃない
「レン、マスターが呼んでる。ちょっと来てー」
「えー今テレビいいとこなのに…」
特にいつもと変わりない、僕とリンとレンとテレビを見ながらだらだらしていた時のことだ。
レンはぶつくさ言いながら、ぐいぐいとミクに腕を引っ張られ視界から消えた。
横目でちらりと確認する。
……目が合った。
そして、すかさず口が開いた。「…べ、別にあんたのこと見てたわけじゃないから」
「はいはい」そんな憎まれ口を言って不器用に背中を預けてくる彼女に、笑顔を贈る。
「何ニヤニヤしてるの?キモチワルイ」
「んーリンだって、好きな人と一緒に居られたら嬉しくて笑顔にならない?」
「そんな、鼻の下伸ばしてよく言えるわね。大体あんたのことなんか好きでも何でもないんだから」
リンはぷいっとそっぽを向いてしまった。
リンを"好き"という気持ちに下心なんかない。大切な家族、そんな当たり前の感情からだ。
でも鼻の下が伸びていたとは…反省反省。確かにリンはかわいい。僕の好みど真ん中だ。それは認めよう。
ただ、そんなときでも近くに居るリンは多少は僕のこと、分かってくれているんだろう。
勝手にそう理解している。「リンーごめん、機嫌直してよ、一緒にアイスでも食べにいこう?」
「めんどくさい」
「駅前の、新しく出来たお店なんだけど…」その一言にリンのリボンがふわり、揺れる。
「ほんと?」
リンが一瞬だけこっちを見たような気がした。それから、顔にかかった髪を細い指先にくるりと巻く。
いつだって可愛いしぐさににやけるな!と言うほうが無理がある。「うん。お兄ちゃんのおごりだぞー」
立ち上がってリンに手を伸ばすとにっこり笑って答えてくれる。
僕が目を細めると何故だかその手を振り払ってつんと目をそらす。
神様、どうかこんな時間がいつまでも続きますように──
5話完結になります。いつもとちょっと違うツンデリンになる予定です。王道ツンデレで行きます。
よろしくお付き合いください。兄さんはいつもこんなんだ。天然というか…そして話の入り方がいつも同じパターンじゃね…orzナケル