日常お題 7携帯電話

 

.「はい、おっけー」

カイトがそう言うと、ミクとレンはやれやれ、と流れ解散していった。
リンが新しい携帯を買った。
それで、早速記念に1枚撮ったところだ。

「ありがとう、にいに」

カイトは3人と一緒に写したソファに腰を下ろすと隣のリンに携帯を手渡した。
ミクもレンも…とりあえず見える範囲にはいない。
確認を終えると、カイトはリンの肩をそっと抱き寄せた。
ひょいと覗き込むと、待受を今撮った写真へと変更しているようだった。
買ったばかりだというのに、随分慣れた手つきだ。
早速、設定した画面には、先程携帯越しに見た3人の顔が映る。
「僕も入りたかったなー」
「それじゃあ、撮る人いないじゃん」
「何か冷たくない?」
頑張れば撮れなくはないでしょ、と今日は珍しくカイトが頬を膨らめてぼやいている。
リンはごめん、と言いながらも、少し間をおいて、にっこり笑顔で首を横に振った。
「うん、やっぱり、にいにはだめ」
「そっか」
危うく、屈託のない笑顔に納得してしまいそうになる。
「……って、な  ん で だ め な の さ」
ほんとに危ない。カイトが更にすごむようにリンに顔を近づけるとリンはふと視線をそらす。
摘むように意地悪な頬に触れると、リンは恥ずかしそうに俯いた。
「僕だってリンと映りたいのに」
「だって」
触れた部分がほんのりと暖かくなる。
「開くたびににいにの顔見えたら恥ずかしいもん…」
「リン…」
何だか無性に抱きしめたくなった。

僕は違う。例えば、こんな幸せなひと時を切り取れるんだから─
そんなことを思いながら、やっぱり最後は抱きしめていた。

顔を埋めたリンの項からはいいにおいがした。
「リン、大好き」
「ちょっ…にいにっ、誰か見てるかも……」
「今度は僕とふたりで撮ろう?こうやって、ぎゅってしてさ」
慌てるリンを無視して言葉どおりに腕に力を入れると、その首が真っ赤に染まる。
「僕はちゃんと待受にするよ」
「ばっ、ばかっっ」
腕の中から逃げ出そうとリンがもぞもぞと動き出す。
「ふふっ、逃がさないよー」
そんな可愛い顔が見たくて顔を上げると、部屋の隅にいたらしいレンとバッチリ目が合った。
その手にはポテトチップの袋が握られている。きっとお菓子でも探していたんだろう…いやいや、問題はそこじゃない。

 

「レン君。僕用に1枚撮ってくれる?」
「お断りします」

 

バカップル、好物です。
ミクがいるときはいちゃいちゃしないけど、レンには見せ付けます☆

 

inserted by FC2 system