日常お題 6.ペットボトル

 

「全くさ…リンはちょっと頭が固いんだよ」
「なによー、にいにだって都合が悪くなるとすぐ逃げるくせに!!」

珍しい、と言えば珍しい光景だ。
リンとカイ兄はぎりぎりと火花を散らし合っている。
何故か俺の部屋で。

「ねえ、どっちが悪いと思うレン君?」
「ねっ、どっちが悪いと思う、レン??」

誰と一緒でも自分がため息をつく役どころなのが最近の悩みだ。
鼻息を荒くしてどっち!?と近寄るふたりをやっとのことで押し返す。
カイ兄は双子の片割れの自分よりずっとリンと息が合っている気がする。

「あの〜喧嘩なら余所でやってくれます?」

理由は分からない。
ただ、ふたりがここに来たときにはもうにっちもさっちも行かない状態だった。
しかもお気に入りのふわふわクッションはリンに奪われて、その胸元に抱かれている。
かれこれ20分くらい。今も何やらぐだぐだ言い合っている。

「もーにいにのばかぁ!!」

ついにリンの怒りが頂点に達したらしい。
すっと立ち上がると、お気に入りのクッションが勢いよく投げられた。
「ちょっ」
カイ兄の組んだ足に当たる。
「そういうところが良くないって言ってるんだよ」
つん、とそっぽを向くカイ兄にリンの目がほんのり涙で滲んだ。
意外にガツンと言うカイ兄に驚きつつ、慌ててフォローを入れる。
カイ兄は聞こえない振りをしているのか、黙ったまま持っていたペットボトルの水を一気に喉に流し込んだ。

「あ、リンにもひとくちちょうだい?」
「いいよ」

はい、と自然に差し伸べられたそれを受け取ると、リンは打って変わってふにゃりと笑った。
ありがとうを言うとカイ兄もつられるように優しく微笑んだ。

「じゃ、いこうか、リン?」
「うんっ。レン、またあとでねー」



「え」

固まっていると、ラブラブモードのふたりも負けずに手を硬く握り合った。
そして、振り返ることもなく、そのままどこかへ行ってしまった。

何といったらいいのか、俺、乙。

 

フリーズが治る気配がない。

 

暴走するカイリン組。見せつけにきました?という話。

 

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