日常お題 3.フライパン
それはそれは、珍しい光景でした。
「…ミク、何してんの?」
「んーだって今日はおにいちゃんの誕生日じゃない」台所で白いフリルのついたエプロンを着て、くるっと振り返るありえない構図。
ちょっときらきらと星が舞っているように見えたのはきっと目が疲れているせいだ。
だってうちのミク、だぜ?「へー意外。そういうの気にする人なんだ」
「レン、一回地獄に堕ちてみる?」
「すみませんでした」背筋が寒くなるのを感じつつ、俺は冷蔵庫からバナナヨーグルトを取り出してテレビの前に座った。
……
……
台所のほうからなんだか香ばしい匂いがする。
そちらに目を向けると、ミクは鼻歌交じりで楽しそうに手を動かしている。
ここからは机が陰になってそれは見えない。「何してんの?」
「レンには関係ないでしょ、ストーカー!変態!!」ミクはさも気持ち悪そうな表情をする。
なにこの仕打ち。
俺、ミクに何かした?
まあ、いつもそんな調子だからもう慣れたけど。
あれ…何か面白い番組してるじゃん。気付くと俺はミクのことも忘れてテレビに没頭していた。
顔を上げて時計を見ると時間はそろそろお昼。
「チャーハンでも作るか」
よっこらせ、と立ち上がって部屋を見渡すといつの間にかミクはいなくなっていた。まあいい。
炊飯ジャーを確認する。オッケー、白米確認。
コンロの上にはちょうどフライパンもある。
チャーハン作るよ!
うん、上出来だ。
皿の上のチャーハンを食べ終えた頃、またミクがやってきた。「あれ、それ」
「…昼飯だけど。悪いけどミクの分は、」
「もしかしてフライパン使った?」
ミクはなぜかばつの悪そうな顔をした。
「え…使ったよ」
「なんともない?」
「ああ」
「ほんとに!??」
「何なんだよ、ミク、フライパンに何か…」俺が全部言い終わる前にミクはぶつぶつ言いながら行ってしまった。
失敗したのかな…という台詞を残して。
……
……
あれ
……
……
唐突に終わる。ミクと絶妙なコンビのレンがかきたかったのに暴走した。
レンのその後はご想像にお任せします。