日常お題 10.枕

 

リンとレンはよく似ている。
性格はそうでもないけど、姿形や好みや仕草が。

「だめ、リンのなの!」
「俺が先に使ってたのに!!」
「よしなよ、リンちゃん、レン君」
カイトを間に挟んでふたりが取り合っているのはリビングにおいてあるぺたんこのクッション。
一応、人数分のクッションは用意してあるのに双子はそれをいつも取り合っている。
なぜなら、真ん中でふたつに折って頭を載せると、固さ、高さ共にばっちりの枕に早変わりするからだ。
「だってーレンが!!」
「カイ兄も見てただろ、俺が先だったでしょ!!」
「うーん…」

ちらりとレンのほうを見る。確かにレンの言うとおりだった。反対のリンも確認する。
大きな目をウルウルさせた可愛いリンを見ると一肌脱いであげたい気持ちにもなる。
でもでも、年長者として嘘をつくわけにはいかない。
これらをすべて解決できる方法はないかとカイトは頭を捻る。

 

「じゃあ、リンちゃんは僕の膝枕で寝る?」
「やだ、これがいいの」
やだって…特に下心があったわけでもないけど、そんなにはっきり言われると、そうですか、と言うしかない。しかも一瞬変な顔した?
「リン。カイ兄泣きそうだよ?」
「あー違うのにいに、だってレンが…」
リンがぱっと振り向いて首を振る。
すると、カイトに弁解をするリンの手からクッションが離れた。
「じゃ、これ俺のね」
「あー!!レン!ずるい!!!!」

 

「……あーもういいや、今日はにいにで我慢する」

「我慢って…」
しぶしぶと言った感じでリンは寝転んだ。
かわいい、可愛いんだけど、さっきからどこかやるせない。

「んっ」

「……にいに?」
「なに?」
「にいにの膝なんかすごい気持ちいい、ちょっと、レン!レン!!」
「何だよ、クッションなら…」
「違うの、ちっょと騙されたと思って」
「ん……こ、これは…」

 

「お兄ちゃん、何してるの?」

「ん、ミク」
時計を見るとさっきから15分ほど時間が進んでいた。
動くわけにもいかない。
右足にリン、左足にはレンがそれぞれ寝息を立てていた。
リンもレンも膝の少し下あたりの同じような所に同じような格好をしている。
「気に入ったみたい」
「じゃあ、これは私のね」
「ミクもこれなの?」
こくり、と頷くとミクはレンのお腹に乗っかったクッションを持ってテレビの前に陣取った。

 

 

お気づきの人もいるかもしれませんが、出会い〜恋人編初期のカイトはリンをちゃん付けで呼んでいます。
リンはずっとにいにですけど…小さなこだわりですw

 

 

inserted by FC2 system