ここにキスのお題 5.隠れた耳

 

向き合うように抱っこされると、丁度マフラーがリンの頭にフィットする。
コタツにみかんに大好きなひと。
リンはじゃれるように頬を擦りつけた。

「どうしたのリン?今日はずいぶん甘えんぼさんだね」

細い肩を抱き寄せるとリンは嬉しそうに目を細めた。
「だって、寒いんだもん」
「あ、そう…」
カイトの心情に合わせるように窓の外で風が冷たい音を立てる。
そんなカイトを尻目にリンは頭を預けていたマフラーの端をくるくると自分の首に巻きつけている。

「ううう、今日は本当に寒いね」

それなのにリンはいつもの格好+今巻きつけたマフラーだけ。
「他にも服あるでしょ?」
「これが一番好きなんだもん、それににいにが抱っこしてくれるし」
恥ずかしそうに顔を赤らめるリンは贔屓目なしでもかわいいと思う。
今度は喜んでもいいのかな。少し迷っていると、確信に変わるリンの一言。

「ね、もっとぎゅーってして」
「はいはい」

お望み通り、とリンの耳元に顔を埋め背中に手を回す。
「リン」
カイトの声に、耳に掛かった細い髪が揺れる。
それを追うようにリンの身体が震えた。
「ひっ、何それ、くすぐったいっ」
「何もしてないよ?」
「にいにが喋ると耳、かゆい!!」
リンは耳を庇う様に手でガードする。
「あ、ごめん」
「もぉーくすぐったいってばぁ!!」
「………」
そう言われるともう黙っているしか出来ない。
せめてもの抵抗にぎゅっとリンを抱き寄せた。

 

「にいに?」
「……」

自分の所為とはいえ、黙り込んでしまっったカイトにちょっぴり焦る。
深く抱きしめられていてその表情は伺うことが出来ない。
「にいに、ごめん。もう怒んないから、何か喋ってよー」
すると、一呼吸おいてカイトの腕の力が緩まり、手が頬に触れた。

 

「好きだよ、リン」

導かれるように顔を上げると、何時になく真剣な目に鼓動が高鳴る。
「にい…っ」
「かわいい」
ふわりと髪を指に絡めて、いつもは見えない赤く染まった耳に口付ける。
「なっ」
「好きだよ、大好き」
頬に額に何度も優しくキスを落とし、耳元に甘ったるく囁きかける。
今度はリンがもういい、と言っても許す気はなかった。

 

「にいにのばかばかっ!!」
ぽすぽすと胸元に拳をぶつけるリンに思わず口元が緩んでしまう。

「あれ?もう怒んないって言ったのに…」
「知らないっっ」

リンはそんなカイトの様子にまだ火照りの治まらない頬をぷぅっと膨らめた。

 

 

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