ここにキスのお題 4.冷えた頬

 

久しぶりにリンとお使いに出かけた。
もう日は西に傾きかけていて、風が吹くと少し肌寒い。
道に植えられ木々はほとんどの葉を地に落としてしまっている。

「あー、寒いっっ」

リンはいつもの格好の上に薄手のコートを着ている。
ちっょとではなく、本当に寒そうだけど…
「マスターもお使い頼むならもっと早い時間にしてくれればいいのにね」
「ほんと、気が利かない」
本当はちょっぴり感謝していた。最近中々ふたりきりになれなかったし。
道端の電灯には薄暗い明かりがともり始めている。
カイトの右手には買い物袋、左手にはリンの右手。
ふと目が合うと自然に合図をするように左手に力を込める。
リンはそれを返しながら、嬉しそうにふにゃっと笑った。

「ね、にいに。公園寄って行こうよー」
家の近くの公園に差し掛かると、リンが繋いだ手を引っ張った。
「風邪引いちゃうよ」
「ちょっとだけっ!」

ぐいぐいひっぱられていって、ふたりで小さなベンチに腰掛けた。
「なんかおとなのでぇとだね」
「う、うん」
よく意味が理解できないけど…
リンはぎゅっと腕に抱きつき、カイトに体重を預けた。
重なった部分からその熱が流れ込んでくる。
公園はほとんど人通りもなくて、頭の上にある電灯がひとつともっているだけで薄暗い。

 

「っきし」

「大丈夫?」
くしゃみをしたのはカイトの方だった。
「…そろそろ帰ろうか?」
「うん、付き合ってくれてありがとう」
そんなに長い時間じゃなかったけど、突然のふたりきりが嬉しかった。
だから、感謝の意味で、ほっぺにキスした。
「わっ、冷たい……にいに、大丈夫?」
「いや、だめかも…」
リンの細い首にしがみつくように抱きつく。

「もっと暖めて…?」


 

こうして、寒さに弱い兄は2、3日寝込みました。

 

弱ってると甘えたくなるよね、と言う話。そして初めて家の外に出ましたw

 

 

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