ここにキスのお題 2.熱い額

 

目を開けると、そこには紺碧の波が広がっていた。

 

「……んっ」

霞んだ目を擦る。
しばらくぼーっとした後、それがカイトの髪であったことに気付いた。

(あれ、いつの間に寝ちゃったんだろう…?)

今日は日曜日。
いつものように一緒におやつを食べたり、歌ったりしていた。
午後の日差しが薄いカーテンの間から差し込む。
ふたりが座っているベッドの縁はその光を受けてとても暖かい。

「いい天気になったね……朝はあんなに曇ってたのに」
「ほんとだ。これならデート行きたかったなぁ」

しゅんと、俯いたリンの頭をぽんぽんと2、3度撫でる。
「そんな顔しないでよ…動物園は逃げないからさ」
「じゃあ代わりにいっぱいぎゅうして?」
「いいよ、おいで」

そうだ。それから、ベッドの上でいっぱいでじゃれ合って……
ぽかぽか陽気も手伝って、そこはお昼寝にはもってこいだった。

カイトはリンの胸元に顔を埋めて、まだ規則正しい寝息を立てている。
指先でそっと前髪を掻き分けると、閉じられたままの瞳が覗いた。
(まつげ、長いな…)
こんなに近くで寝顔を見たのは初めてかもしれない。
次はほっぺにのの字を書いてみた。
「ん……リン…」
カイトはくすぐったそうに身じろいだ。
「にいに?」
「………」

(寝言…?)
カイトはいつもとはまた違うふんわりとした顔をしている。
少しの空白の後、再び寝息が聞こえた。
そんな様子に思わず笑みが零れる。

「だいすき」

ふと、自分にも聞こえるかどうか位の声で囁く。
そして、紺碧の波間の白い額にちゅっとキスした。

すると触れた部分が急に熱くなり、背中に回されていた腕に力がこもる。
「リン……」
「わっ…起きてたの??」
身を引こうとすると、耳まで真っ赤にしたカイトと目が合った。
「だって、あっちこっち触ってるから…」
何時から…と思うと恥ずかしすぎる。
とりあえず、それ以上は見てられずに火照った顔をそらす。

「じゃあ、お返しね」

カイトはすっと伸び上がると、同じようにリンの額に触れた。

 

「にいっ…」
「僕も大好きだよ、リン」

 

 

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