33cm
33cm。
間に月と日を挟めば女の子の日になるこの数字は、けど女の子のリンに優しくないようだった。
「お兄ちゃんはずるい」
今日で何回目か分からないへそ曲がりに、俺はひたすら苦笑するしかなかった。
……気持ちは分からなくもないけど、下手に励ませない。
人間なら、そのうち伸びるよ、とか俺が縮むかもしれないよ、とか言えるけど、アンドロイドのリンと俺は、伸びることも縮むこともない。この差は永久に埋まらないのだ。
だからと言って、ケンカして頭を叩こうとしたら手が届かなかったなんて理由でぶすくれられても困る。
これに紛れてケンカした理由も忘れてくれたらいいけど、たぶんリンは覚えている。そういうところはしっかりしているから。
ここでリンは小さくて可愛いよとか言ってもきっと逆効果だろう。けど言葉が思いつかない。リンに対する憎まれ口なんて俺の辞書には載ってないのだ。
仕方ないから、いつも通りリンの頭を撫でた。
見下ろしたリンがあからさまに不機嫌になるのがわかる。
リンの頭の上に置いた俺の手を、下から持ち上げて離させた。
「私はできないのにっ」
ずるいっ、とまた呟いて、フグみたいにほっぺたを膨らませる。
……どうしようか。
何秒かためらって、実行した。
「リン」
「なぁに……っ」
振り向いたリンを正面から、できるだけ優しく抱きしめる。
「なにするのおっ」
逃げようとしてるけど、腕でホールドしてるから逃げられない。
「ダッツならまた明日買ってあげるから」
ケンカの火種を持ちだすと、リンは不機嫌そうな顔ながらも暴れるのはやめた。
許してくれたかな、と油断してると、右のほっぺたを引っ張られた。……けっこう痛い。
「ひたたた」
「今度は半分こ、いい?」
目が据わっていても、見上げてくるんじゃ可愛くしか見えないけど。
「わはった、わひゃったよ」
リンは納得してくれたらしく、手を離してくれた。
もう許してくれただろう。改めて優しく抱きしめる。リンも今度は腕を回してくれた。
「お兄ちゃん、ずるい」
胸に耳を押し付けてのことばは、言ってることこそさっきと同じだけど、甘えた声をしていた。